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サスペンションモデファイ

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 今回は普段はあまりやらない作業なのですが、まあ今の自分が持っているアイテムを使ってどんな品物が作れるのか?みたいな作業風景です。後から振り返って内容をまとめると簡単な作業なのですが、作業中はいろいろ考えました。

 SUGO2DAYSに向けて、田中太一君のサスペンションを作りました。去年からJECのレースではサポートさせてもらっています。ライダーとしての技術や取り組む姿勢が僕にとってとっても刺激的で、参考にもなりますし、いつも勉強させてもらっているんです。サスペンションのサポートは去年の最終戦あたりだったか、一セット作って使ってもらいました。今年のサスペンションはそれを上回るものを作りたいなーって考えていたんです。

 マシンは250XC(2サイクル)です。今年のエルズベルグで使ったマシンと同じ仕様(だったと思う)という事ですので、データ取りにもなりますし、僕にとっては一石二鳥ってとこですね。

 前後サスペンションのコンビネーションとしては、フォークはクローズドカートリッジに変更(ノーマルはオープンです)して、ショックは去年使ったPDSのSXSショックを使いました。クローズドカートリッジに関しては、特に太一君の要望が強くて、モトクロスで絶対負けないサスペンションを使いたいって事でした。

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 フォークに関しては去年から幾つか試してきたデータを元に、通常のモデファイを加えました。MXで一等賞って言われましたが、そーは言っても二日間山の中を走ったり、エクストリームなテストがあったりというほんちゃんがありますので、それにも対応できるセットにしたつもりです。まあ極力ソフトにシムを並べて、まとめ方は普段お客さんに対応しているものよりもハードな仕上がりになっています。

 フォークはそんなんで割と簡単に仕上がったのですが、問題はショックでした。

 手持ちのSXSのショックは11モデルまでの対応品で、ポン付けでは12モデルに合いません。12モデルはフレーム変更されてショックの全長が長くなりました。スウィングアームの取り付け角度も変わっています。

 12モデルの簡単なインプレなのですが、特に良くなったのは2サイクルだと思います。125EXCにじっくり乗ってみて感じたのは、とにかくリアショックが良くなったなーって事です。PDSの違和感なんて有りません。出たばっかりの98モデルとか改良が進んできた04モデル、前回フレームが変わった08モデルも相当大きな衝撃を食らった記憶が有るのですが、今回のは特別でしたね。車体が11モデルよりやや前傾した雰囲気で、クイックに曲がります。これまでのKTMの曲がりにくさは完全に改善されたと思います。直進性もスポイルされていなくて、まあパーフェクトな仕上がりですね。

 強いて言えばエンデューロでのコンデション、スピードレンジの低いコースでは抜群なのですが、ハイスピードコース、ジャンプ、うねりに対しては、前後ともサスペンションのセットがしょぼいと思いました。この辺りは仕方がないといったところだと思いますが、僕にとってはまだまだ遊べそうな余地が残っていて今後が楽しみですね。そういえばここのところのKTMって4年ごとに大きく良くなってますね、80年代・90年代は3年事って決まりみたいなものがあったんですけどね。

 話が脱線しましたが、12モデルの車体に対応するSXSショックのモデファイです。まずはシリンダーの交換です。太一君にあらかじめ送ってもらったノーマルショックのパーツを使っていきます。ロッド長ではなくてシリンダー長が伸びていますのでやや面倒な作業になりました。とにかくWP独特の屈強なねじロックをクリヤーして分解していきますので、結構時間もかかるんですよね。

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 ショック長が伸びているため、当然ニードルも変更されています。オイルロックピースの役割を果たしていると思われますが、それぞれで形状まで異なります。

 右が09EXCノーマル、真ん中がSXSショック、左が12PDSとなります。当然12用を入れ替えました。年間何回かしか使わない(笑)工具ですが、とっても役に立ちますね。

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 ロッドはSXS用(チタンコーティングしてあります)が使えました。ですが念のため分解してニードル・ニードルのシリンダーなど寸法を確認しました。

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 ローダウンカラーです。右に組み付けてあるのが元々12モデルに組まれていたカラーです。4ミリオフセットされてました。ローダウン仕様だったんですね。このカラーはXCモデルには2サイクル・4サイクル両方に使われていますね。150XCや350XCにも入っていました。足つき性は良くなりますし、コーナーリングも車体が低くなる分スムーズになってきます。

 ただ、僕的にはやっぱりフロントも対処して下さいよーって印象なんですよね。幾つかXCのモデルに試乗しての感想です。今回は太一君のライディングスキル、車体のバランス、あとはモトクロス向けって事でオフセットはゼロ(左側)に入れ替えました。

 完成後の写真を撮り忘れてしまって、とっても残念なのですが、とにかく出来上がりましたのでSUGOで使ってもらいました。リザルトは皆さんもご存知のとおりです。ライダーのレースに対する思い・トレーニング・レース運び・ライディングスキル…全てが良かったんだと思います。わずかでもお手伝いできて僕もとってもうれしかったです。

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photo:mondo-moto TTXカートリッジキットです。既に使われている方もいると思います。OHLINSが各メーカーのフロントフォーク向けに販売している品物です。ずーーーと前から興味があって、使ってみたかった品物です。キム兄さんが何処からか仕入れてきてくれたんです。

 完全に趣味のお話でレクリエーションなのですが、こうゆうのを試してみるっていうのが自分にとってプラスになります。


 KTMって、OHLINSのイメージがあんまり無いですよね。

 ですが96、97の2サイクルのリアショックではOHLINSを標準採用していましたし、PDSの開発もOHLINSが最初だったと思います。

photo:mondo-moto 98のプロトタイプ(パセリやサラが乗っていた)はリアがOHLINSのPDSでフォークがマルゾッキっていうなんともぐっと来る仕様でした。

 梱包を開けた瞬間、箱の中にダイブしたくなりましたよ(笑)。

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 マニュアルを見て組み付けを始めました。結構簡単な作業で、サスペンションを分解組み付けできる人なら誰でも可能です。二回目からは当然マニュアル無しで行けますね。外観の特徴では、どちらが先かわかりませんが、WPにそっくりです。あとSHOWAにも似てますね。

 すごく重要だと思ったのは、インナーロッド径が細いんです。ちなみにWPが12mm、OHLINSは8mmです。クローズドカートリッジはフォークのアウター・インナーの中にもう一つ同じ構造のものが入っているのと同じだと思うので、インナーロッドが細いっていうのは剛性をダウンしているって事なのかな?と最初に思いました。WPのクローズドカートリッジに関しては、今までいろいろ書いてきましたが、剛性感がとても有るんです。直線的な動きにはとても良い動きをしていると思いますが、マシンを寝かしこむ、曲がるって事に関して、もう少ししなやかでも良い気がするんですよね。

 外観ではわかりませんが、インナーカートリッジ内のオイル管理も窒素ガスでって言うのは欧州車独特です。WPがブラッターを使っているのに対して、OHLINSはなんとフリーピストンです。すごいなー…

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 キットはKTM450EXC用です。それに対してこのキットをKTMの125EXCに対応させるべく4.1N/mmのスプリングが入っていました。純正に比べコンマ1ハードなスプリングです。意外に250EXCあたりまで対応できるのではと思います、感覚的に。ちなみにベースに使うフォークは、去年太一君用で作った4860のオープンカートリッジを使いました。

 スプリングを旋盤でつかんで磨きます。ピカピカでしょー?。モデファイ作業ではどれにも行っています。気分良いですよね。

 KTM450EXCというとハードなシムの積層だと思うのですが、ひとまずどんな感触なのかを早く知りたかったので、その辺りは追って…って事で、インナーまでは分解していません。

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 一連の組み付け作業の中で最も気を遣った作業が、スプリングプリロードの調整です。どのメーカーのフォークもリアショックもどんなにモデファイを加えたところで、この寸法を間違えると自分のイメージと違った仕上がりになってしまうと思います。

 今回はマニュアルには寸法が何ミリっていうのは記載されていたのですが、実際にはインナーチューブをアンダーブラケットから外して仮組みしてセットしてみないと確認できませんでした。一回この作業を行えば、スプリングの全長プラス、何ミリかのディスタンスカラーで全体の寸法が把握できますが、初回ですのでちょっと面倒な作業になりました。

 ちなみに今回はエンデューロ向きにって事で、プリロードは1mmって事にしておきました。初めて試すインナーキットって事ですので、乗ってみたときのイメージが全く解りませんので、全部手探りです。

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 左がOHLINSで使われているオイルロックピースです。サスペンションがボトムして行って、最終的にどこで踏ん張らせるかを決めている重要なパーツになります。

 WP4860クローズドカートリッジは、この辺りの性能が今一歩っていう一般的な話が有るみたいです。基本的にはモトクロスで使われているフォークですのでスピードレンジやコースコンディションは僕には把握できない部分が多いのですが、まあ今のところ僕が普段使っている使用状況では殆ど感じられません。ただ右の写真のオレンジのパーツは、海外のサスペンションメーカーがそのあたりの改善のために販売しているものです。僕にとって、この辺りの寸法のデータを取り寄せて行くってのは、今後の課題になっていくんでしょうね。

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 流行のSKFです。確かにすっごく良いですよ。今回はせっかくなのでダストシールのリップを一つカットしました。もう一つフリクションを減らします。

 お客さんのサスペンションではこんなことしませんのでご安心下さい(笑)。

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 オイルはSHELLのいつも使っている5番を使いました。本当はOHLINSの純正オイルが良いんでしょうけど、ちょっと急いで作業していて取り寄せなかったって事と、今後の課題に取っておこうかと…

 オイル量はWPとほぼ一緒で、360CCってとこでした。

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 最後にトップキャップを締めています。51mmの八角形はWPの工具では合わなくて、MC GEARさんからモーションプロの商品を購入しました。反対側も47mmのコンビネーションになってます。低価格で、とっても幸せな気分にさせていただきました(笑)。

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 最後に確認したのが、サスペンションの全長です。WPのクローズドカートリッジより短いです(この写真ですと解り難いんですが)。コーナーリングの倒しこみや、全体的な取り回しにかなり影響が出てくると思います。たったの5mm程度でも体感できます。

 ちなみにWPのオープンカートリッジは更に短いんですよね。エンデューロに向いたフォークっていう意味では、こっちのが正解だと思います。WPより長かったら嫌だなーと心配していたのですが、全て組み終えて一安心ってとこですね。

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 テスト車両は、いろいろ悩んだ末にキム兄さんの125EXC'11を使わせていただきました。この品物を取り寄せてくれたってことと、やっぱり4サイクルや排気量の大きいマシンに比べて、サスペンションの性能がはっきり解り易いって思ったからです。リアショックは、去年まで大川さんが使っていたSXSのPDS(150用にモデファイしてあります)。何だかすごくゴージャスだと思いませんか?。

 12の125EXCと比べてどーなんだろーってのも含めて、楽しいテストになりました。場所は富津。MXコースなのですが、サンドと固い路面がはっきり分かれています。ジャンプは飛べなくてもあきらめが付く(笑)ジャンプで、ストレスがたまりません。適当にわだちやうねりがあって荒れた感じが大好きで良く走りに行ってるんですよ。

 TTXは想像していた以上に素晴らしかったです。落ち着きがあって接地している感じがとても良くて、ギャップに対するレスポンスもコーナーの倒しこみも、僕の下手なジャンプの着地もしっかりしていました。

 あんまり良く書くとうそ臭くなりますけど、本当ですよ。

 そうですねー、今まで色んなエンデューロマシンに乗りましたけど、こんなに良いフォークってあったかなーと。こんなのも有るんだな…って思いました。

 今年最後の走行で、大きな収穫がありましたね。今後これをどう生かしていくかって事になるのですが、来年がとーーーても、たのしみです。

2011.12.27.
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